「英語の勉強」というと、どうしても受験勉強のように、文法を学んだり単語を暗記したり、というイメージがつきまといます。
しかし実は、自分の現在の実力と目指す英語力によって、勉強の仕方は異なるのです。
考えてみたら当然のことなのですが、意外と気づかずに「遠回り」をしてしまっていることがあるのです。
「遠回り」の勉強してない?
英語学習の落とし穴ともいえる「遠回り」の勉強に陥ってしまうのは、こんなパターンです。
- 英会話ができるようになりたいのに、TOEIC対策の参考書を勉強している。
- 留学してビジネスを勉強したいのに、日常会話ばかり暗記している。
- 仕事で英語を使いたいのに、恋愛ドラマを観て英語を勉強している。
スポーツで言ってみれば、速球を投げられるようになりたいのに、素振りの練習ばかりやっているようなものでしょうか。
私も以前は、こんなことばかりしていました。TOEICの勉強をがんばって、対策本や練習問題を学習しまくって、点数は上がりました。最終的には960点。
TOEIC960点までなっても、全然「英語ができるようになった!」と実感できなかったのです。
それは、自分は何ができるようになったら「英語ができるようになった!」と思えるのかを、きちんと考えていなかったせいでした。
まずは目標設定をしよう
こんなふうに、まちがった方向の努力を避けるためには、まず自分が「ほしいと思う英語力」を明確にすることが大切です。
私は、「仕事の打合せで、英語で意見を自由に述べられる」ようになることが目標でした。
もちろん、英語で小説を読んだり、字幕なしで映画を観たり、日常会話を楽しんだり、ということもしたいのですが、一番大切なことに絞って考えました。
目標は具体的に絞る
この「目標を絞る」ということが重要です。英語のすべてを学ぶことは不可能ですし、仮にできたとしても膨大な時間がかかってしまいます。
それよりも、一刻も早く自分のほしい英語力を手に入れるべきです。その目標を達成できたら、次の目標を作ればいいのです。
目標の立て方はこんなものが考えられます。
- 外資系企業の面接で、英語で受け答えができるようになる。
- 取引先の外国人のプレゼンテーションを、通訳なしで理解できるようになる。
- 英語でレポートやメールをスムーズに書けるようになる。
今、自分にとって一番必要な英語力はどんなものか、できるだけ具体的にイメージしてみましょう。具体的で必要性が高いほど、身につきやすくなります。
まちがった目標設定という「落とし穴」
気をつけなければいけないのは、以前の私のように、本当の目標とはちがう目標を設定してしまうことです。
実際に私が求めていたのは、「仕事の打合せで、英語で意見を自由に述べられる」ことだったのに、「TOEICで高得点を取る」というまちがった目標に向かって努力してしまっていたのです。
下記の記事でも書かれていますが、TOEIC900点台を取っても英語がほとんど話せない人はたくさんいます。
TOEICで高得点を取るのと、英語を話せるようになるのは、はっきり言って別のスキルです。TOEICで高得点を取りたければ、TOEICに頻出する単語を最優先で暗記し、過去問題をやり込むのが最短距離です。
一方、英語で話せるようになるのに必要なのは「英語を英語のまま理解し、英語で考え、英語でそのままアウトプットする」のに必要な脳内回路を形成することです。それは、テストで高得点を取るのに最適化された脳内回路とは似て非なるものなのです。
The Asahi Shinbun GLOBE+より引用(https://globe.asahi.com/article/11532057)
「会議で英語を話す」ためには、スピーキングの練習が最も大切なはずです。それなのに、TOEICの頻出単語を覚えたり過去問を解いたりしていては、大きな遠回りになってしまうのです。
具体的な目標を立てれば、最短距離を進める
逆に、しっかりと目標を立てれば、最短距離を選ぶことができます。
目標と、それに向かうための最短の勉強法の例を簡単にご紹介します。
「仕事の打合せで、英語で意見を自由に述べられるようになりたい」場合
これは私の目標でした。現在は、ほぼ自由に意見を述べることができるようになっています。もちろん、洗練された表現には程遠いので、ブラッシュアップは必要ですが……。
ただ、これも目標を絞って、まずは「洗練された言い方でなくていいので、言いたいことを伝える」ということにフォーカスしました。
これはスピーキングが大切なので、3つのことを行いました。
- シャドーイング
- オンライン英会話(できるだけ毎日)
- 会社のネイティブの同僚と、できるだけ英語で打ち合わせする
シャドーイングは、ネイティブの速さに合わせて話すトレーニングのようなものでした。口の動きが滑らかになって、さまざまな言い回しも真似しているうちに覚えられます。
オンライン英会話は、安いところがたくさんありますよね!私は「Native Camp」と「DMM英会話」を使いました。
フィリピン人の先生が多かったですが、「自分が話す」ことが目的だったので、特にネイティブスピーカーにはこだわりませんでした。できる限り毎日やることで、英語でのレスポンスが早くなります。
また、私の勤め先には英語圏のネイティブがたくさんいるのですが、ほとんどの人は日本語が堪能です。それでも、あえて「今英語を強化しているので、できるだけ私には英語で話しかけてください!」とお願いして、英語で会話してもらっています。
下手な英語を聞かれる恥ずかしさは捨て去りました。(笑)
「外資系企業の面接で、英語で受け答えができるようになりたい」場合
この場合は、面接対策を中心に進めればいいでしょう。
私は、初めて英語の面接を受ける際に、面接の想定質問と回答が書かれた参考書を買って勉強しました。
- 作者:有元 美津世
- 発売日: 2016/05/31
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
この参考書を元に、自分のオリジナルの「想定問答集」を作成し、ひたすら練習して暗記しました。
また、英会話学校のマンツーマンクラスに申し込んで、面接の対策をやってもらいました。客観的に自分の話し方を直してもらえて、とても効果がありました。
このような勉強をした結果、アメリカ人の担当者との英語面接を通過し、その会社に転職することができたのです。
「取引先の外国人のプレゼンテーションを、通訳なしで理解できるようになりたい」場合
この場合は、ビジネス英語のリスニングをメインにやった方がいいでしょう。やはり、ビジネス英語に特化した参考書を買ったり、TEDのプレゼンを聞いたりすることがオススメです。
TEDの良いところは2つ。
- 実際のプレゼンテーションを数多く聞いて、話の流れや英語のスピードに慣れることができる。
- 世界中のプレゼンターが出ているため、世界中の訛りの英語を聞ける。
自分がよく聞く英語の訛りに合わせて勉強することができるのがいいですね。
個人的には、下記の書籍がオススメです。ビジネスと銘打ってはいませんが、内容はビジネス系の文章が多く、グラフを説明する文章なども入っているので、プレゼンのリスニングを鍛えるのに適しています。
一つの文章が長すぎないので、シャドーイングにもぴったりです。(リスニングにはシャドーイングも有効なのですが、それはまた別の記事で。)
「英語でレポートやメールをスムーズに書けるようになりたい」場合
この場合は、話したり聞いたりすることよりも、読み書きが重要ということになります。特に、書く方が大切ですね。
ポピュラーなやり方としては、英文メールの文例集を参考にすることです。私は以前は、常にオフィスの机にそういった本を置いておいて、必要なときにすぐ参照できるようにしていました。
ビジネスEメール・チャットツールの英語表現 社内・取引先とのやり取りで今すぐ使いたいビジネス文例と入れ替えフレーズ (Eメールテンプレートダウンロードつき) (今すぐ使えるビジネス英語表現シリーズ)
- 作者:松浦 良高
- 発売日: 2019/10/21
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
英文ビジネスEメール 実例・表現1200 [改訂版] (Z会のビジネス英語)
- 発売日: 2015/03/07
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
英語のメールを書くたびに、書籍に出ている表現を真似していると、次第に覚えてくるのでどんどん書くスピードが上がります。
それから、英語でのレポートや資料。これもある程度の型があるので、下記のようなポイントに注意しましょう。
- 簡潔に情報をまとめ、箇条書きを活用する。
- 主語がわかりきっている場合や「We」などの場合は、主語を省略する。
- ビジネス英語にふさわしい表現を使う。
英文資料作りには、ちょうど良いテキストがありません。インターネットなどで、ふさわしい言い回しを探すか、ビジネス英語表現の本を参考にして書くのがよいでしょう。
また、不安な場合は、ビジネス英語に特化した添削サービスを使うことも考えられます。
目標設定で、効率よく英語を身につけよう!
日本人の特性なのか、英語の勉強でも「基礎から」始めたくなってしまうものです。英語を身につけるためには、まず単語から……文法から……と、なってしまっていませんか?
あなたの「身につけたい英語」はどんなものなのか、それを目標設定ではっきりさせることで、目標達成のための近道がわかるはずです。
ただ漫然と英語を勉強し続けていては、一生勉強して終わってしまいます。私は、そんな危機感から自分の目標設定を見直して、ようやく求める英語力の水準に達したと感じることができました。
「もう英語は勉強しなくていい」1日も早く、そう思えるように。ぜひ目標設定をしてみてください。